死者の枕元に供えるごはん。死者の霊がめしの中に宿り、復活することを念じる呪術的意味から生じた儀式。死者の復活をあきらめたときに、出棺前の食い別れの風習が生まれた。枕飯は、全国に見られる習俗であるが、地方地方によってその流儀に違いがある。一般的には、死者の息が絶えると同時に北枕にして、家人が白い飯を炊いて枕元に供える。
福岡県の東部ではこれを早オゴク(御供)といっている。阿蘇地方では、オテツキノオボクサマと呼称し、少量のめしをたき、少しも残らぬように盛りつけて供える。残すと死人のために悪いといい、早くあげないと、死人の善光寺参りに遅れる、ともいっている。
熊野地方では、善光寺に代って、妙法山となる。徳島県名東郡では、枕飯は、湯灌の直ぐ前に供える。和歌山県日高郡では、茶碗に高く盛りつけ、箸を十文字にそれにさし、塩と味噌をも供える。これをマクラヤノメシといっている。隠岐島では、枕飯をマクライリノメシといっている。奈良県宇陀郡の山間部では、マクラヅキメシ(枕付き飯)と称し、炊いた飯は一粒も鍋に残さないようにして茶碗に盛り、箸を一ぜん立ておく。なお、浄土真宗では枕飯を用いない。
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